今回は、PowerPointの画面切り替え効果「変形」を使って、スライド間でオブジェクトを滑らかに動かす方法を紹介します。変形は、前後2枚のスライドにある共通のオブジェクトの位置や大きさ、色などの違いを読み取り、その間を自動でつないで動きを作る機能です。アニメーションの軌跡を1つずつ設定しなくても、移動や拡大、回転といった動きを表現できます。基本の手順に加えて、思いどおりに動かすためのコツや注意点もまとめます。
この記事は、Windows版のPowerPoint(Microsoft 365、PowerPoint 2021、PowerPoint 2019)のデスクトップアプリを前提にしています。Microsoft 365のPowerPoint for the web、Mac版、モバイル版でも変形は使えますが、メニューの場所や利用条件が異なる場合があります。また、PowerPoint 2016は条件を満たせば変形の再生はできるものの、作成には対応していません。
画面切り替え効果「変形」の特徴
変形は、[画面切り替え]タブにある効果のひとつです。前のスライドと次のスライドに同じオブジェクトがあると、その違いを滑らかな動きとして表示します。
変形で表現できる動き
- オブジェクトの移動(位置を変える)
- オブジェクトの拡大・縮小(サイズを変える)
- オブジェクトの回転や反転
- 塗りつぶしの色や書式の変化
- 新しいオブジェクトのフェードイン、不要になったオブジェクトのフェードアウト
- 単語や文字単位での移動(並べ替えなど)
テキスト、図形、画像、SmartArt、ワードアートなどに使えます。ただし、グラフは変形の対象にならず、切り替わるときはクロスフェードになります。
アニメーション機能との違い
通常のアニメーションは、1枚のスライドの中でオブジェクトごとに動きや順番を設定します。変形は、2枚のスライドの「始まりの状態」と「終わりの状態」を作るだけで、間の動きをPowerPointが補ってくれます。設定項目が少ないぶん、位置関係を見ながら直感的に動きを作れるのが利点です。
変形を設定する基本手順
変形を使うには、少なくとも1つのオブジェクトが共通している2枚のスライドが必要です。もっとも簡単なのは、スライドを複製する方法です。
- 動きの開始時の状態になるスライドを作ります。
- 左側のサムネイルでそのスライドを右クリックし、[スライドの複製]を選びます。
- 複製した2枚目のスライドで、オブジェクトを終了時の状態に変更します(移動する、大きさを変える、回転させるなど)。
- サムネイルで2枚目のスライドを選択します。
- [画面切り替え]タブで[変形]を選びます。
- [プレビュー]をクリックして、動きを確認します。
変形は動いた後の側(2枚目)のスライドに設定する点がポイントです。1枚目に設定しても、意図した動きにはなりません。
効果のオプションで動きの単位を選ぶ
[画面切り替え]タブの[効果のオプション]では、変形をどの単位で扱うかを選べます。
- オブジェクト:図形や画像などをまとまりとして動かします。基本はこの設定です。
- 単語:テキストを単語ごとに動かします。文章の語順を入れ替える演出に使えます。
- 文字:テキストを1文字ずつ動かします。文字を並べ替える演出などに向いています。
日本語の文章では、意図した区切りで単語として認識されない場合もあります。思った動きにならないときは、テキストボックスを分けて「オブジェクト」単位で動かすと調整しやすくなります。
変形を使った演出のアイデア
図形や画像を移動させる
説明の流れに合わせて、矢印やマーカーを次の項目の位置へ動かすと、聞き手の視線を誘導できます。2枚目のスライドで位置を変えるだけなので、手順の説明や工程図に取り入れやすい演出です。
画像の一部を拡大して見せる
地図や画面の写真などを使う場合、2枚目のスライドで画像を大きくし、注目させたい部分がスライドの中央に来るように配置します。変形を設定すると、ズームインするような動きになります。画像をスライドの外まで広げる必要があるときは、表示倍率を下げると操作しやすくなります。
縦に長い画像を使い、2枚目で画像を上へ移動させれば、スクロールしているような表現もできます。また、2枚目で画像をトリミングして、一部分に絞り込む見せ方も可能です。
項目を出し入れする
2枚目のスライドに新しいオブジェクトを追加すると、切り替えのときにフェードインします。反対に、2枚目からオブジェクトを削除すると、フェードアウトします。オブジェクトをスライドの外に置いておき、2枚目でスライド内に移動させると、外から滑り込んでくる動きにもなります。
色や回転の変化を見せる
2枚目で図形の色を変えると、色が滑らかに変化します。比較の説明で「選ばれた項目だけ色が変わる」といった演出に使えます。回転ハンドルで角度を変えたり、3-D回転を変えたりすれば、立体的に向きが変わる動きも作れます。移動・拡大・回転・色の変化は同時に組み合わせることもできます。
思いどおりに動かすためのコツ
オブジェクトはコピーや複製で用意する
変形は、前後のスライドにある同じオブジェクトを対応させて動きを作ります。2枚目で新しく図形を描き直すと、別のオブジェクトとして扱われ、移動ではなくフェードの切り替えになることがあります。スライドの複製やコピー&貼り付けで同じオブジェクトを用意するのが確実です。
名前の先頭に「!!」を付けて対応を指定する
Microsoft 365などの対応バージョンでは、オブジェクトの名前を使って、どのオブジェクト同士を変形させるかを指定できます。名前の先頭に「!!」(感嘆符2つ)を付け、前後のスライドで同じ名前にすると、そのオブジェクト同士が対応します。円と四角形のように種類の異なる図形でも、一方からもう一方へ形が変わるように動かせます。
名前の変更は[選択]ウィンドウで行います。
- [ホーム]タブの[編集]グループで[選択]から[オブジェクトの選択と表示]を選びます。
- 一覧でオブジェクトの名前をクリックし、もう一度クリックして編集できる状態にします。
- 名前を「!!円形1」のように変更し、Enterキーで確定します。
- 次のスライドの対応させたいオブジェクトにも、同じ名前を付けます。
この方法を使うときは、次の点に気をつけます。
- 「!!」で始まる名前のオブジェクトと、「!!」で始まらないオブジェクトは対応させられない
- 同じスライドの中で、同じ「!!」付きの名前は1つだけにする
- グラフは名前を付けても変形せず、クロスフェードになる
[選択]ウィンドウは、重なったオブジェクトの確認にも役立ちます。名前が分かりやすくなるため、スライドの編集自体も進めやすくなります。
頂点を編集した図形を変形させるとき
頂点の編集で形を整えた図形同士を変形させる場合は、前後の図形の頂点の数をおおよそそろえると、形の変化がきれいになります。図形を描く向き(時計回りか反時計回りか)もそろえておくと、ねじれたような動きを防ぎやすくなります。なお、複数の穴が空いた図形は、形を変える変形には対応していません。
速度は「期間」で調整する
動きが速すぎる、または遅すぎると感じたら、[画面切り替え]タブの[期間]で時間を調整します。説明しながら見せる場面では少しゆっくりめ、テンポよく進めたい場面では短めにするなど、内容に合わせて決めるとよいでしょう。
使う場所を絞る
変形は動きが目立つため、すべてのスライドに使うと、見る人が内容より動きに気を取られることがあります。章の切り替えや、強調したい図解など、意味のある場面に絞って使うと効果が伝わりやすくなります。
共有するときの注意点
変形を使ったスライドは、相手のPowerPointのバージョンによっては、変形として再生されない場合があります。たとえば、必要な更新が適用されていないPowerPoint 2016では、変形の代わりにフェードの切り替えとして再生されます。また、PowerPoint for the webで変形を使う場合は、Microsoft 365のサブスクリプションと、職場または学校のOneDriveやSharePointに保存されたファイルが条件になります。
発表に使うパソコンが自分のものと異なる場合は、事前に本番の環境でスライドショーを確認しておくと安心です。
まとめ
PowerPointの画面切り替え効果「変形」を使うと、2枚のスライドの違いから滑らかな動きを作れます。ポイントを振り返ります。
- スライドを複製し、2枚目でオブジェクトの位置・大きさ・色などを変えて、2枚目に[変形]を設定する
- [効果のオプション]で、オブジェクト・単語・文字の単位を選べる
- 拡大、スクロール、フェードイン・フェードアウトなど、さまざまな演出に応用できる
- 対応バージョンでは、名前の先頭に「!!」を付けて対応させるオブジェクトを指定できる
- グラフは変形しないこと、相手の環境で再生方法が変わることに注意する
まずは図形1つを移動させるところから試し、慣れてきたら拡大や色の変化を組み合わせてみてください。