今回は、Wordのディクテーション(音声入力)を使って、話した言葉をそのまま文書の下書きにする方法を紹介します。
キーボードで一文字ずつ入力するより、まず声に出して考えをまとめたほうが進めやすい場面があります。会議のメモ、報告書の骨組み、アイデアの書き出しなどは、音声入力と相性のよい作業です。この記事では、ディクテーションの始め方から、句読点や改行の入れ方、精度を上げるための工夫、うまく動かないときの確認点までを順に整理します。
対象環境は、Microsoft 365のWord(Windows版・Mac版)です。Microsoftのサポート情報では、ディクテーションはMicrosoft 365のサブスクリプションで利用できる機能とされており、Microsoft 365を使わないWindows用のOffice 2016や2019では利用できないと案内されています。Web版やモバイル版のWordにも音声入力の機能がありますが、画面や操作が異なる部分があるため、この記事ではデスクトップ版を中心に説明します。
Wordのディクテーション(音声入力)とは
ディクテーションは、マイクから入力した音声をテキストに変換して、カーソルの位置に書き込んでいく機能です。音声の変換にはインターネット接続が使われるため、マイクと安定したネット環境の両方が必要になります。
Microsoftの説明によると、音声データは結果のテキストを返すために送信され、サービス側に音声や文字起こしされたテキストが保存されることはないとされています。ただし、社外秘の内容を扱う場合は、所属する組織のルールに沿って利用可否を判断しておくと安心です。
音声入力が向いている作業
- 思いついた内容を止まらずに書き出したいときの下書き作成
- 見出しだけ先に話して構成を決めるアウトライン作り
- 打ち合わせ直後に要点を残すメモ取り
- 長時間のタイピングで手が疲れたときの入力方法の切り替え
完成した文章をいきなり作るよりも、「まず話して素材を出し、あとでキーボードで整える」という使い方のほうが、ディクテーションの良さを生かせます。
ディクテーションの始め方
Windows版での基本手順
- Microsoft 365にサインインした状態で、新しい文書または既存の文書を開きます。
- 文字を入れたい位置にカーソルを置きます。
- [ホーム]タブの[ディクテーション]を選択します。
- ボタンがオンになり、聞き取りが始まるのを待ってから話し始めます。
- 話した内容が画面に表示されていきます。
音声入力中は、画面上に小さなディクテーション用のメニューが表示されます。一時停止したあとに再開したいときは、そのメニューのマイクアイコンを押すか、キーボードショートカットAlt + `(バッククォート)を使います。
Mac版での基本手順
Mac版でも、[ホーム]タブの[ディクテーション]から始める流れは同じです。Microsoftのサポート情報では、Mac版のキーボードショートカットとしてOption + F1が案内されています。WindowsとMacではショートカットが異なるので、両方の環境を使う方は混同しないように注意しましょう。
句読点・改行を声で入れるコツ
日本語で話すとき、句読点や改行は「言葉」で指示できます。Microsoftのサポートページには、日本語用のコマンドとして次のような語句が掲載されています。
- 「とうてん」と言うと「、」
- 「くてん」と言うと「。」
- 「かいぎょう」と言うと改行
- 「新しい段落」と言うと新しい段落
- 「かぎかっこ開く」「かぎかっこ閉じる」で「」
- 「かっこ開く」「かっこ閉じる」で()
- 「疑問符」で?、「感嘆符」で!
記号についても「アットマーク」「アスタリスク」「パーセント記号」などの読み上げで入力できます。使える語句は言語ごとに異なり、Microsoftのページには言語別の一覧がまとまっています。最初は一覧を手元に開いておき、よく使うものから覚えていくと定着しやすくなります。
自動句読点を使うかどうか決めておく
ディクテーションの歯車アイコン(設定)には、自動句読点のオン・オフがあります。オンにすると、話の区切りに合わせて句読点が自動で入ります(選んだ言語で対応している場合)。
自分で句読点を言いたい人は、自動句読点をオフにしておくと、意図しない位置に「、」が入る場面を減らせます。逆に、話すことに集中したい人はオンにしておき、あとでまとめて手直しするほうが効率的です。どちらが合うかは話し方によって変わるので、短い文章で両方を試してから決めるのがおすすめです。
設定画面で確認しておきたい項目
歯車アイコンから開く設定では、次の項目を確認できます。
- 音声言語:認識する言語を切り替えます。既定では文書の言語が使われます。
- マイク:使用するマイクを選びます。外付けマイクやヘッドセットを使う場合はここで切り替えます。
- 自動句読点:前述のとおり、句読点の自動挿入を切り替えます。
- 機密性の高いフレーズをフィルター処理する:不適切な可能性がある語句を「***」で伏せ字にします。
英語の資料を作るときは音声言語を英語に変えるなど、文書の内容に合わせて切り替えると認識が安定しやすくなります。
音声入力の精度を上げるための工夫
話し方の工夫
- 一文を長くしすぎず、意味のまとまりごとに区切って話す
- 早口にならないよう、普段の会話より少しゆっくり話す
- 社内用語や略語は誤認識されやすいので、あとで検索と置換でまとめて直すつもりで進める
- 数字や固有名詞が多い部分は、キーボード入力に切り替える
環境の工夫
- 周囲の雑音が少ない場所で使う
- ノートPCの内蔵マイクで認識が不安定なときは、ヘッドセットや外付けマイクを試す
- マイクの入力レベルを調整し、ミュートになっていないか確認する
- 通信が不安定だと出力が抜けることがあるため、安定したネット接続を使う
聞き間違いの候補を活用する
認識が怪しい単語には、下に印が付き、代わりの候補が示されることがあります。候補から正しい語を選べば、その場で修正できます。もともと正しい単語であれば[無視]を選びます。全部をその場で直そうとすると話す流れが止まるので、ある程度話し終えてからまとめて確認するほうが進めやすいでしょう。
声で編集・書式設定もできる
ディクテーションでは、文字入力だけでなく、削除や書式設定の音声コマンドも用意されています。Microsoftのページでは、主に英語のコマンドとして「直前の単語を削除する」「指定した語句を太字にする」「コメントを追加する」といった操作が紹介されています。
ただし、こうした編集・書式設定のコマンドは言語によって使える範囲が異なります。日本語の一覧には句読点や記号などが中心に掲載されているため、日本語で使う場合は、文字の入力を音声で行い、書式や細かな編集はキーボードとマウスで行う、と役割を分けると混乱が少なくなります。
ディクテーションがうまく動かないときの確認点
- ボタンが見つからない:Microsoft 365のサブスクリプションでサインインしているか、WindowsであればWindows 10以降かを確認します。
- ボタンが灰色で押せない:文書が読み取り専用になっていないか確認します。
- マイクにアクセスできない:ほかのアプリやWebページがマイクを使っていないか確認し、再度試します。
- マイクが検出されない:接続状態を確認し、Windowsのサウンド設定などでマイクのテストを行います。
- 音声が認識されない:ミュートや入力レベルを確認し、静かな場所や別のマイクで試します。
下書きを効率よく仕上げる流れ
音声入力を取り入れるときは、次のような流れにすると作業が整理しやすくなります。
- 最初に見出しだけを話して、文書の骨組みを作る
- 各見出しの下に、思いつく内容を止まらずに話していく
- 話し終えたら、誤認識・重複・言い回しをキーボードで修正する
- 見出しにスタイルを設定し、段落の順番を入れ替えて構成を整える
- 最後に読み返して、表記ゆれや固有名詞を確認する
「話す工程」と「整える工程」を分けることで、どちらの作業にも集中しやすくなります。
まとめ
Wordのディクテーションを使うと、話した言葉をそのまま文書に入力でき、下書きやメモ作りを進めやすくなります。Microsoft 365のWordでは[ホーム]タブの[ディクテーション]から始められ、WindowsではAlt + `、MacではOption + F1のショートカットも使えます。
日本語では「とうてん」「くてん」「かいぎょう」などの語句で句読点や改行を入れられ、設定から自動句読点や音声言語、マイクの切り替えも行えます。認識の精度は話し方や環境に左右されるため、区切って話す、静かな場所で使う、外付けマイクを試すといった工夫を組み合わせてみてください。音声で素材を出し、キーボードで仕上げるという役割分担を意識すると、音声入力を日々の文書作成に取り入れやすくなります。