今回は、Excelの「ゴールシーク」機能を使用して、目標とする結果(ゴール)から逆算して、必要な入力値を自動的に導き出す方法について紹介します。
ゴールシーク機能とは何か
Excelで売上予測やローンの返済シミュレーションなどを作成する際、通常は「単価」や「数量」「金利」といった複数の値を入力し、数式によって「最終的な利益」や「月々の返済額」といった結果を求めます。
しかし実務においては、「結果が最初から決まっていて、そのための条件を知りたい」という逆のパターンが頻繁に発生します。
例えば、「今月の利益目標を100万円にするためには、あと何個販売すればよいか?」「毎月のローン返済額を5万円に抑えるためには、頭金をいくら用意すればよいか?」といったケースです。
このような逆算を自力で行う場合、手作業で数値を少しずつ変えては結果を確認するという「当てずっぽう」の作業を繰り返すか、複雑な代数の数式(方程式)をわざわざ作り直さなければなりません。
この面倒な逆算シミュレーションを一瞬で、かつ正確にExcelにやらせる機能が「ゴールシーク」です。
目標とする値(ゴール)と、変化させたいセルを1つ指定するだけで、Excelが自動で数値を変動させて計算を繰り返し、目標にぴたりと一致する解を見つけ出してくれます。
ゴールシークの基本的な使い方と手順
「利益目標から必要な販売数量を逆算する」というシンプルな例を用いて、ゴールシークの具体的な操作手順を解説します。
表には、「単価(B2セル)」「販売数量(B3セル)」「売上(B4セル:=B2*B3)」「経費(B5セル)」「利益(B6セル:=B4-B5)」が入力されており、現在の利益は80万円だと仮定します。
これを「利益100万円」にするための「販売数量」を求めます。
ゴールシークダイアログボックスの呼び出し
まず、リボンの「データ」タブを開きます。
「データツール(または予測)」グループの中にある、「What-If 分析」というアイコンをクリックします。
表示されたドロップダウンメニューの中から、「ゴールシーク」を選択します。
すると、画面上に非常にシンプルな3つの入力欄を持つ「ゴールシーク」ダイアログボックスが開きます。
3つの項目の設定方法
ダイアログボックスの各項目に、以下のルールに従ってセルや数値を指定していきます。
- 数式入力セル:
目標としたい結果(数式)が入っているセルを指定します。今回の例では「利益」が表示されている「B6」セルをクリックして指定します。必ず数式が入力されているセルでなければなりません。 - 目標値:
達成したい具体的な目標の数字をキーボードから直接入力します。今回は利益を100万円にしたいので、「1000000」と入力します。(カンマは入れずに数字だけを入力します) - 変化させるセル:
目標を達成するために「動かしてもよい(逆算して求めたい)セル」を指定します。今回の例では「販売数量」を知りたいので、「B3」セルをクリックして指定します。ここには数式が入っていない、純粋な数値が入力されているセルを選ぶ必要があります。
結果の確認と反映
3つの項目の設定が終わったら、「OK」ボタンをクリックします。
すると「ゴールシーク解答の探索状態」という小さな画面が表示され、Excelが内部で目まぐるしく数値を入れ替えて計算を繰り返す様子が一瞬見えた後、目標値に到達したというメッセージが表示されます。
同時に、背後にあるワークシート上の「販売数量(B3セル)」の数値が自動的に書き換わり、それに連動して「利益(B6セル)」がピタリと100万円になっています。
この算出された逆算結果(販売数量)で表を上書き保存したい場合はそのまま「OK」を、あくまでシミュレーションとして元の数値に戻したい場合は「キャンセル」をクリックします。
ゴールシークを活用する実務的なシーン
ゴールシークは、単なる販売計算だけでなく、様々なビジネスシーンのシミュレーションで強力な武器となります。
ローンの返済計画シミュレーション
住宅ローンや車のローンを組む際、PMT関数などを使って「借入金額」「金利」「返済期間」から「月々の返済額」を計算する表を作ります。
「月々の返済額を今の家賃と同じ8万円に抑えたい」という明確なゴールがある場合、ゴールシークを使います。
「数式入力セル」に返済額のセル、「目標値」に8万円(数式の仕様上マイナスになる場合は-80000)、「変化させるセル」に「借入金額(または頭金)」を指定して実行します。
これにより、「毎月8万の返済なら、いくらまで借りられるか」という予算の上限を一瞬で導き出すことができます。
損益分岐点(利益がゼロになる点)の算出
新しい事業や商品の計画を立てる際、「最低でもいくつ売れば赤字にならないか(損益分岐点)」を知ることは非常に重要です。
この場合、ゴールシークの「目標値」に「0(ゼロ)」を入力します。
変化させるセルに「販売数量」を指定して実行すれば、「利益がちょうど0円になるための販売数量」がピンポイントで算出され、それが「絶対にクリアしなければならない最低ノルマ」として明確になります。
ゴールシークの限界と注意点
非常に便利な機能ですが、複雑すぎる条件には対応できないという限界もあります。
変化させられるセルは「1つ」だけ
ゴールシークの最大の制約は、「変化させるセル」として指定できるのが1つのセルのみだという点です。
「利益を100万円にするために、単価と販売数量と経費の3つを同時に少しずつ変動させて、最適な組み合わせを見つけたい」といった高度な要求には、ゴールシークでは対応できません。
このように複数の変数を同時に動かしたり、「単価は最大でも5000円まで」といった制約条件を設けたりしながら最適な答え(最適解)を導き出したい場合は、ゴールシークの上位機能である「ソルバー(Solver)」というアドイン機能を使用する必要があります。
近似値で終了してしまうケース
設定した数式が非常に複雑であったり、指定した目標値が数学的に絶対に到達不可能な数値であったりする場合、Excelが計算を諦め、「目標値が見つかりませんでした」というエラーが出たり、目標値に近いだけの半端な数字(近似値)で計算を終えてしまったりすることがあります。
逆算の結果が現実離れした数字(販売数量がマイナスになるなど)になった場合は、設定した前提条件や表の数式そのものに無理がないかを見直す必要があります。
まとめ
Excelの「ゴールシーク」機能を使用して、目標とする結果から逆算して必要な入力値を導き出す方法について解説しました。
「データ」タブの「What-If
分析」からダイアログボックスを開き、「結果のセル」「目標の数値」「動かしたいセル」の3つを指定するだけで、手作業による面倒な当てずっぽうの計算から解放されます。
目標利益を達成するためのノルマ計算や、月々の返済額から逆算するローンシミュレーション、利益がゼロになる損益分岐点の算出など、ビジネスにおける意思決定や計画立案を強力にサポートしてくれます。
変化させられる値が1つだけという制約を理解した上で、複雑な数式を組み直す手間を省くスマートなシミュレーションツールとして、ぜひゴールシークを活用してみてはいかがでしょうか。