【PowerPoint】スライドに切り替え効果を設定・調整する方法

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プレゼンテーション資料を作成する際、スライドの内容だけでなく、スライドが切り替わる瞬間の演出も重要な要素の一つです。PowerPoint(パワーポイント)には、スライドからスライドへ移動する際にアニメーション効果を加える「画面切り替え」機能が標準で搭載されています。この機能を使用することで、話の区切りを視覚的に伝えたり、観客の注目を集めたり、あるいは洗練された印象を与えたりすることができます。

例えば、ページをめくるような効果や、前のスライドがフェードアウトして次のスライドが浮かび上がる効果など、多種多様な動きが用意されています。しかし、これらの効果は闇雲に使用すればよいというわけではありません。ビジネスシーンに適したシンプルなものから、イベント向けのダイナミックなものまで、用途に合わせて適切に選択する必要があります。

今回は、PowerPointでスライドに切り替え効果を設定する基本的な手順から、再生時間(期間)やサウンドの調整、自動的にスライドを切り替える設定、変形(モーフィング)」機能まで、幅広く解説します。

スライドの切り替え効果とは

「画面切り替え効果」とは、プレゼンテーション実行中(スライドショー形式)に、あるスライドから次のスライドへ移る際に再生される視覚効果のことです。アニメーションの一種ですが、スライド内のテキストや画像が動く「アニメーション」機能とは異なり、スライド全体そのものの動きを制御します。

適切に設定された切り替え効果は、プレゼンテーションの流れをスムーズにし、聴衆が次の話題へと意識を切り替える手助けをします。一方で、過度な演出は聴衆の集中を削ぐ原因にもなるため、バランス感覚が求められます。

切り替え効果を設定する基本手順

まずは、特定のスライドに対して基本的な切り替え効果を設定する方法を見ていきましょう。操作はリボンメニューの[画面切り替え]タブから行います。

手順

  1. スライドを選択する
    PowerPointの標準表示モードで、左側のサムネイル一覧から、切り替え効果を設定したいスライドをクリックして選択します。複数のスライドに同じ効果を設定したい場合は、[Ctrl]キーを押しながらクリックすることで複数選択が可能です。
  2. [画面切り替え]タブを開く
    画面上部のリボンメニューにある[画面切り替え]タブをクリックします。
  3. 効果を選択する
    「画面切り替え」グループに、利用可能な効果のアイコンが並んでいます(「カット」「フェード」「プッシュ」など)。この中から好みのものをクリックします。
    一覧に表示されていない効果を見たい場合は、ギャラリーの右下にある[その他]ボタン(下向きの矢印と横棒のアイコン)をクリックしてください。すべての効果がカテゴリー別(「淡く」「激しく」「ダイナミック コンテンツ」)に表示されます。
  4. プレビューを確認する
    効果を選択すると、スライド上で即座にアニメーションがプレビュー再生されます。再度動きを確認したい場合は、リボンの左端にある[プレビュー]ボタンをクリックします。

切り替え効果の種類と特徴

PowerPointの切り替え効果は、その性質によって大きく3つのカテゴリーに分類されています。それぞれの特徴を理解し、シーンに応じて使い分けることが重要です。

1. 淡く(Subtle)

動きが控えめで、シンプルかつ上品な効果のグループです。「カット」「フェード」「ワイプ」などが含まれます。ビジネスプレゼンテーションや、内容を重視したい学術的な発表など、あまり派手な演出が好まれない場面に最適です。迷った場合は、最も標準的な「フェード」や「プッシュ」などを選ぶのが無難です。

2. 激しく(Exciting)

動きが大きく、視覚的なインパクトが強い効果のグループです。「カーテン」「折り紙」「飛行機」など、ユニークな動きが含まれます。これらは注目を集めたいタイトルスライドや、章の変わり目、あるいはイベントやパーティ用のスライドショーなどで効果を発揮します。ただし、頻繁に使用すると見ている側が疲れてしまう可能性があるため、ここぞという場面に絞って使用することをおすすめします。

3. ダイナミック コンテンツ(Dynamic Content)

スライドの背景ではなく、スライド上のコンテンツ(テキストや図形など)のみを動かす効果のグループです。「パン」「観覧車」「回転」などがあります。背景デザインが共通しているスライド間でこれらを使用すると、背景は固定されたまま中身だけが入れ替わるような演出が可能になり、スムーズな遷移を実現できます。

効果のオプションを調整する

選択した切り替え効果によっては、動きの方向やパターンをカスタマイズできる場合があります。これを「効果のオプション」と呼びます。

手順

  1. 切り替え効果が設定されているスライドを選択します。
  2. [画面切り替え]タブにある[効果のオプション]ボタンをクリックします。
  3. 表示されたメニューから、変更したい項目を選択します。
    例えば「プッシュ」という効果を選んでいる場合、「下から」「左から」「右から」「上から」といった方向を指定できます。「ワイプ」の場合は方向の他に、斜めの動きなども選択可能です。

※選択している切り替え効果によっては、[効果のオプション]がグレーアウトしており、変更できない場合もあります。

タイミングとサウンドの詳細設定

切り替えのスピードや、切り替え時の効果音を設定することで、より細やかな演出が可能になります。これらは[画面切り替え]タブの「タイミング」グループで設定します。

所要時間(期間)の変更

スライドが切り替わるアニメーションの再生時間を指定します。

  • [期間]ボックスに秒数を入力します(例:1.50)。
  • 数値を大きくすると、ゆっくりとした優雅な動きになります。
  • 数値を小さくすると、素早いキビキビとした動きになります。
  • 長い時間を設定すると、プレゼンテーションのテンポが悪くなるため注意が必要です。通常は0.5秒~2.0秒程度が一般的です。

サウンド(効果音)の追加

スライドが切り替わる瞬間に音を鳴らすことができます。

  • [サウンド]のドロップダウンリストをクリックし、「カメラ」「拍手」「ドラム」などのプリセットから選択します。
  • 「その他のサウンド」を選択すれば、手持ちのWAVファイルを再生させることも可能です。
  • 音を消したい場合は、リストの一番上にある[サウンドなし]を選択します。

※ビジネスの現場では、効果音は不必要または不適切とされるケースも多いため、TPOに合わせて慎重に使用してください。

画面切り替えのタイミング設定(クリック時・自動)

スライドを次のページへ進めるタイミング(トリガー)を設定する方法です。

クリック時(手動送り)

プレゼンターがマウスをクリックしたり、キーボードの矢印キーを押したりしたタイミングで次へ進みます。

  • 「タイミング」グループの[クリック時]チェックボックスをオンにします(デフォルトでオンになっています)。
  • 自分のペースで話を進める一般的なプレゼンテーションでは、この設定を使用します。

自動的に切り替え(自動送り)

設定した時間が経過すると、操作なしで勝手に次のスライドへ進みます。

  • 「タイミング」グループの[自動的に切り替え]チェックボックスをオンにし、その横にある時間ボックスに秒数を入力します(例:00:10.00 で10秒)。
  • デジタルサイネージ(電子看板)としてスライドを流し続ける場合や、自動再生のスライドショーを作成する場合に便利です。
  • [クリック時]と[自動的に切り替え]の両方をオンにすることも可能です。この場合、指定時間が来る前にクリックすれば、その時点で次へ進みます。

すべてのスライドに適用する

作成したスライド枚数が多い場合、1枚ずつ設定していくのは手間がかかります。また、プレゼンテーション全体で統一感を出すためには、全スライドで同じ効果を使うのが一般的です。

現在選択しているスライドの設定(効果の種類、オプション、期間、サウンドなど)を、プレゼンテーション内の全スライドに一括コピーする機能があります。

手順

  1. 基準となる設定済みのスライドを選択します。
  2. [画面切り替え]タブの「タイミング」グループにある[すべてに適用]ボタンをクリックします。

これで、すべてのスライドの設定が統一されます。後から一部のスライドだけ変更することも可能です。

「変形(モーフィング)」

PowerPoint 2019やMicrosoft 365などでは、「変形(Morph)」という切り替え効果が利用できます。

「変形」は、前のスライドと次のスライドにある「同じオブジェクト(図形や画像、テキスト)」を認識し、その間の移動やサイズ変更、色の変化などを自動的に補完してアニメーション化する機能です。動画編集ソフトで作ったような、滑らかで高品質なモーションを簡単に作成できます。

使い方の例

  1. スライドを作成し、図形を左端に配置します。
  2. そのスライドを複製します。
  3. 複製した2枚目のスライドで、図形を右端に移動し、サイズを大きくします。
  4. 2枚目のスライドを選択し、[画面切り替え]タブから[変形]を選択します。

これで、スライドショー実行時に図形が左から右へ移動しながら拡大するアニメーションが再生されます。製品の分解図を見せたり、惑星の移動を表現したりと、工夫次第で高度な表現が可能です。

切り替え効果を削除する

設定した効果が不要になった場合や、リセットしたい場合の削除手順です。

  1. 効果を削除したいスライドを選択します(全スライドから消したい場合は、1枚選択した後に[すべてに適用]を使います)。
  2. [画面切り替え]タブのギャラリー左上にある[なし]を選択します。
  3. これでアニメーションがなくなり、瞬時にスライドが切り替わる状態(カット)に戻ります。

まとめ

PowerPointの「画面切り替え」機能は、プレゼンテーションにリズムとインパクトを与えるための有効なツールです。基本的な「フェード」や「プッシュ」から、高度な「変形」まで、機能は多岐にわたります。

重要なのは、スライドの中身(コンテンツ)をより良く伝えるために効果を使うことです。動きそのものを見せることが目的ではありません。話の流れや会場の雰囲気に合わせ、適切な効果、適切なタイミング(期間)、適切なサウンド設定を選び、効果的なプレゼンテーションを作りましょう。