今回は、Wordの「アウトライン表示」機能を使用して、長文の構成を俯瞰(ふかん)し、見出しの階層を素早く整理・再構築する方法について紹介します。
アウトライン表示とは何か
Wordで数十ページに及ぶ論文やマニュアル、企画書を作成する際、最初から「第1章の本文」を書き始め、次に「第2章の本文」を書いていくという順次的な進め方をすると、途中で「やっぱりこのテーマは第3章に持っていきたい」といった構成の変更が生じたときに、膨大なテキストを切り取って移動させるという非常に面倒な作業が発生します。
このような長文作成において、本文の詳細を書き始める前に、まずは「骨組み(目次となる見出しの構成)」をしっかりと作り上げ、全体の論理展開に矛盾がないかを確認するための専用の表示モードが「アウトライン表示」です。
アウトライン表示に切り替えると、文書が「見出し1」「見出し2」といった階層構造(レベル)ごとにインデントされて箇条書きのように表示され、段落ごとの関係性が視覚的に一目でわかるようになります。
さらに、見出しのレベルを上げ下げしたり、見出しごと(それに紐づく本文も含めて)丸ごと別の章へ移動させたりする操作が、マウスのドラッグやクリックだけで瞬時に行えるため、文書の構造を練り直す「推敲(すいこう)」の段階で絶大な威力を発揮します。
印刷レイアウト表示との違い
私たちが普段Wordを開いて文字を入力している画面は「印刷レイアウト」表示と呼ばれ、紙に印刷されたときの見た目(余白や図の配置、ページ区切りなど)を再現しています。
一方のアウトライン表示は、見た目の装飾(フォントサイズや色、図形など)を極力排除し、文章の「論理的な構造」だけを抽出して表示するモードです。
そのため、アウトライン表示のまま印刷プレビューを見ても、本来の美しいレイアウトにはなっておらず、あくまで「構成を考えるための作業用の裏画面」であると認識しておく必要があります。
アウトライン表示の基本的な使い方
実際にアウトライン表示に切り替え、見出しの階層(レベル)を設定していく基本的な手順を解説します。
表示モードの切り替え
Wordの文書を開き、リボンの「表示」タブをクリックします。
「表示」グループの中にある「アウトライン」のアイコンをクリックします。
すると、画面が切り替わり、各段落の先頭に小さな「丸(またはプラス・マイナスの記号)」が表示された箇条書きのような画面になり、リボンにも「アウトライン」という専用のタブが新しく現れます。
レベル(階層)の設定と変更
アウトライン表示の画面で文字を入力すると、最初はすべて「本文」という一番下のレベル(階層を持たないただの文章)として認識されます。
これを「章のタイトル」や「節のタイトル」といった見出しに格上げしていきます。
タイトルにしたい行にカーソルを合わせ、「アウトライン」タブの「アウトライン
ツール」グループにある、「レベルの変更」のプルダウンメニュー(デフォルトは『本文』)をクリックします。
ここから「レベル 1」を選ぶと、その行が一番大きな見出し(大項目)となり、文字が太字になって少し左に寄ります。同時に、先頭の記号が「+」に変わります。
その下の行にカーソルを合わせ、今度は「レベル 2」を選ぶと、大項目の中にぶら下がる中項目として、さらに少し右にインデント(字下げ)されて表示されます。
このようにして、レベル1、レベル2、レベル3…と階層を定義していくことで、文書の骨組みが完成します。
レベルを変更する操作は、同じグループ内にある「←(レベル上げ)」や「→(レベル下げ)」の緑色の矢印ボタンをクリックすることでも素早く行えます。
アウトライン表示の強力な編集機能
アウトライン表示の最大のメリットは、単に階層が見やすいだけでなく、文書の構成をダイナミックに組み替えることができる強力な編集機能にあります。
本文を隠して見出しだけを表示する(折りたたみ)
何十ページもある文書の場合、すべての本文が表示されていると、全体の構成を俯瞰することができません。
「アウトライン」タブの「レベルの表示」のプルダウンメニューをクリックします。
デフォルトでは「すべてのレベル」になっていますが、これを「レベル 2」に変更してみます。
すると、「レベル3以下の見出し」と「すべての本文」が画面からスッと消え(折りたたまれ)、「レベル1(大項目)」と「レベル2(中項目)」の見出しだけがリストとして表示されます。
この状態にすることで、まるで目次だけを見ているように、文書全体の章立てのバランスや論理展開の矛盾に一瞬で気づくことができます。
再びすべての文章を表示したい場合は、「レベルの表示」を「すべてのレベル」に戻すか、見出しの先頭にある「+」マークをダブルクリックしてその章だけを展開します。
章ごと(見出しと本文のセット)の移動
構成を見直した結果、「第3章の内容を、第1章の後に持っていきたい(順番を入れ替えたい)」というケースが発生します。
通常の印刷レイアウト表示であれば、何ページにもわたる第3章のテキストを正確にドラッグして切り取り、上のページまでスクロールして貼り付けるという非常に神経を使う作業になります。
しかし、アウトライン表示で「レベルの表示」を「レベル1」に絞り込み、本文を折りたたんだ状態にしておきます。
移動させたい「第3章」の見出しの先頭にある「+」マークをクリックして選択し、「アウトライン」タブの上向き矢印(「上へ移動」ボタン)を2回クリックします。
これだけで、第3章の見出しが第1章の下へと移動し、さらに**その見出しに紐づいて折りたたまれていた何十ページもの本文データも一緒に、自動的についてきて移動**してくれます。
マウスで「+」マークを掴んでドラッグ&ドロップで上下に移動させることも可能です。
この「ブロック単位での一括移動」機能こそが、長文編集においてアウトライン表示が手放せなくなる最大の理由です。
アウトライン表示を使用する際の注意点
便利なアウトライン表示ですが、通常の編集画面との違いに戸惑うこともあります。
見出しスタイルとの完全な連動
アウトライン表示で設定した「レベル 1」などの階層は、実はWordの「ホーム」タブにある「見出し1」などのスタイル機能と完全に裏側で連動しています。
アウトライン表示でレベル1に設定した段落は、標準ビュー(印刷レイアウト表示)に戻ると、自動的に「見出し1」のスタイル(フォントサイズや色)が適用されています。
つまり、アウトライン表示で骨組みを作ることは、自動的に目次の作成準備や、デザインの統一を行うこととイコールになります。
そのため、アウトライン表示で設定したレベルを無視して、標準ビューで無理やり文字を大きくして手動で見出しを作ってしまうと、この連動が崩れ、目次が正しく抽出されなくなってしまう点に注意が必要です。
まとめ
Wordの「アウトライン表示」機能を使って、長文の構成を俯瞰し、見出しの階層を素早く整理・再構築する方法について解説しました。
「表示」タブからアウトラインモードに切り替え、「レベル1」「レベル2」と階層を設定していくだけで、文書の論理的な骨組みが視覚化されます。
特に、「レベルの表示」を絞り込んで本文を折りたたみ、見出し(+マーク)をドラッグして章ごと丸ごと移動させるテクニックは、何十ページもの文書の構成を練り直す際に、作業時間を劇的に短縮する魔法のような機能です。
この機能で見出しのレベルを定義しておくことは、後から自動目次を作成するための必須の準備作業でもあります。
いきなり本文を書き始めるのではなく、まずはアウトライン表示で「何をどの順番で伝えるか」という設計図をしっかり組み立ててから執筆に入るという、プロフェッショナルな文書作成のプロセスをぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。