今回は、PowerPoint(パワーポイント)の「デザイナー」機能を紹介します。
プレゼンテーション資料作成に役立つこの機能を使いこなせば、デザインスキルに自信がなくても、短時間でプロフェッショナルなスライドを作成できます。
本記事では、デザイナー機能の基本的な使い方から応用テクニック、最新のAI機能まで解説します。
PowerPointデザイナーとは?
PowerPointデザイナー(旧称:デザインアイデア)は、Microsoft 365サブスクリプションユーザー向けに提供されている機能で、PowerPoint 2016以降のバージョンで利用できます。この機能はAIを活用し、スライドの内容を自動的に分析して、プロフェッショナルなデザインを複数提案してくれます。
デザイナー機能を使うことで、次のようなメリットがあります:
- デザインスキルがなくても見栄えの良いスライドを作成できる
- スライド作成の時間を短縮できる
- 一貫性のあるプレゼンテーションデザインを維持できる
- 文字主体のスライドを視覚的に魅力的な資料に変換できる
PowerPointデザイナーの基本的な使い方
デザイナー機能は簡単に使うことができます。以下に基本的な使い方を紹介します。
1. デザイナーを起動する方法
デザイナー機能を使うには、次の2つの方法があります:
- 自動表示:スライドに画像を挿入したり、テキストを入力したりすると、自動的に右側にデザインアイデアが表示されます(Microsoft 365サブスクリプションユーザーの場合)。
- 手動起動:【デザイン】タブの【デザイナー】グループにある【デザインアイデア】ボタンをクリックすることで、手動で起動することもできます。
初めてデザイナーを使用する場合は、「デザインのアイデアを得るためのアクセス許可」を求めるメッセージが表示されることがあります。その場合は「オンにする」を選択しましょう。
2. デザインアイデアの活用方法
デザイナーは、スライドの内容に応じて様々なデザインアイデアを提案します。主に以下のような場面で活躍します:
- 画像を挿入した場合:画像を自動的に解析し、見栄えの良いレイアウトを複数提案します。
- テキストを入力した場合:テキストの内容に合わせたデザインやレイアウトを提案します。
- 箇条書きリストを作成した場合:リストをグラフィカルな表現に変換するアイデアを提案します。
提案されたデザインの中から気に入ったものをクリックするだけで、スライドのデザインが自動的に変更されます。もし気に入ったデザインがなければ、右上の×ボタンを押して提案を閉じることもできます。
PowerPointデザイナーの活用シーン
1. 画像を活用したスライドデザイン
デザイナー機能は特に画像を含むスライドで効果を発揮します。スライドに画像を挿入すると、デザイナーは自動的に画像を解析し、以下のようなデザインアイデアを提案します:
- 画像の配置を最適化したレイアウト
- 画像に合わせた背景色や効果
- 画像に合わせたフォントスタイルや色
- 画像と文字のバランスを考慮したデザイン
単に画像を貼り付けただけでは印象的なスライドにはなりませんが、デザイナー機能を使えば、プロが作ったようなインパクトのあるスライドを簡単に作成できます。
2. テキストを視覚的に変換
スライドにテキストが多すぎると、聴衆の注意を引きづらくなります。デザイナー機能では、リストやプロセス、タイムラインなどのテキストを読みやすいグラフィックに変換する提案をしてくれます。
例えば、箇条書きで入力した手順や過程は、自動的にフローチャートやタイムラインなどのビジュアル表現に変換することができます。これにより、情報が整理され、視覚的にも理解しやすくなります。
3. SmartArtの活用
デザイナー機能はSmartArtグラフィックと連携して、テキストを魅力的なビジュアルに変換することができます。例えば、以下のようなケースで活用できます:
- プロセスの説明をフロー図に変換
- 組織構造を階層図で表現
- 相関関係をベン図で表現
テキストの構成を分析し、最適なSmartArtグラフィックを提案してくれるため、効果的な視覚表現が簡単に作成できます。
PowerPointデザイナーの制限と対処法
デザイナー機能は便利ですが、いくつかの制限もあります。ここでは、主な制限と対処法を紹介します。
1. 複雑なスライド構成での制限
デザイナー機能は比較的シンプルな構成のスライドでは効果を発揮しますが、複雑な構成のスライドでは十分に機能しないことがあります。例えば、タイトルと文章とグラフの3つのコンテンツだけであれば機能しますが、それ以上複雑なコンテンツの場合は期待通りの結果が得られないことがあります。
このような場合は、スライドをシンプルな構成に分割するか、手動でデザインを調整する必要があります。
2. デザインアイデアが表示されない場合
デザインアイデアが表示されない場合、以下の原因が考えられます:
- インターネットに接続されていない
- Microsoft 365のサブスクリプションを持っていない
- PowerPointのバージョンが古い
- 図形やテキストボックスを手動で配置している
- 複数ユーザーが同時に1つのスライドを編集している
これらの問題を解決するには、インターネット接続を確認し、PowerPointを最新バージョンに更新する、スライドの構成をシンプルにしてみる、などのことをするとよいでしょう。
3. デザインアイデアを非表示にする方法
デザインアイデアが邪魔だと感じる場合は、自動表示をオフにすることができます。方法は以下の通りです:
- PowerPointで【ファイル】タブを開く
- 【オプション】を選択
- 【全般】から下にスクロールし、【PowerPointデザイナー】セクションを探す
- 「デザインアイデアを自動的に表示する」のチェックボックスをオフにする
この設定をオフにしても、必要なときに手動で【デザイン】タブから【デザインアイデア】ボタンをクリックして機能を使うことができます。
最新のPowerPointデザイナーのAI機能
Microsoft 365は常に進化しており、デザイナー機能にも新しいAI機能が追加されています。以下に最新の機能をいくつか紹介します。
1. Microsoft Designer統合
2024年7月に発表されたMicrosoft Designerとの統合により、PowerPointのデザイナー機能が強化されました。この統合により、Copilotを通じてテキストプロンプトからデザインコンテンツや画像を作成し、直接スライドに追加できるようになっています。
Microsoft Designerはテキストプロンプトでやりとりすることで、デザインコンテンツや画像の作成や編集が可能なAIデザインアプリです。この機能を活用することで、より創造的で魅力的なスライドを作成できます。2025年からはMicrosoft 365 Copilotに組み込まれ、より統合された体験を提供しています。
2. Copilotとの連携
Microsoft 365 Copilotを使用すると、自然言語の指示だけでスライド全体を自動生成できます。例えば、「マーケティング戦略についての10枚のスライドを作成して」と指示するだけで、AIが適切な構成、デザイン、コンテンツを提案してくれます。
Copilotは文脈を理解し、ユーザーの意図に合わせたスライドを生成するため、スライド作成の時間を短縮できます。また、既存のMicrosoft 365のデータを活用して、より関連性の高いコンテンツを提案することも可能です。
3. AIによるビジュアル要素の強化
最新のデザイナー機能では、AIがテキストの内容を分析し、関連するアイコンやイラストを自動的に提案してくれます。これにより、テキスト主体のスライドも視覚的に魅力的な資料に変換できます。
例えば、「ネットワーク」と入力するとネットワークに関連するデザインアイデアやイラストが生成され、「フルーツ」と入力するとそれに関連するビジュアル要素が提案されます。これにより、スライドの内容に合った適切なビジュアル要素を簡単に追加できます。
PowerPointデザイナーを活用するためのコツ
デザイナー機能を最大限に活用するためのコツをいくつか紹介します。
1. シンプルな構成から始める
デザイナー機能は比較的シンプルな構成のスライドで最も効果を発揮します。まずはシンプルな構成(タイトル、サブタイトル、画像1枚など)からスタートし、デザインアイデアを適用した後で必要に応じて要素を追加するとよいでしょう。
2. 高品質な画像を使用する
デザイナー機能は画像の質に影響されます。できるだけ高解像度で、背景がシンプルな画像を使用すると、より良いデザイン提案を得られます。また、画像の内容も重要で、スライドのテーマに関連した画像を選ぶとよいでしょう。
3. 一貫したテーマを維持する
プレゼンテーション全体で一貫したデザインを維持するために、最初に選んだデザインスタイルを後続のスライドでも使用することをおすすめします。これにより、プロフェッショナルな印象を与えるプレゼンテーションを作成できます。
4. 必要に応じて手動調整を加える
デザイナー機能はあくまで提案であり、すべてのケースで完璧な結果を提供するわけではありません。提案されたデザインを基本として、必要に応じて手動で調整を加えることで、より目的に合ったスライドを作成できます。
他のAIスライド作成ツールとの比較
PowerPointデザイナー以外にも、AIを活用したスライド作成ツールが増えています。以下に主なツールとの比較を紹介します。
1. Canva AI
Canvaのテンプレートを利用してAIスライドを作成できます。テキストを入力すると自動でレイアウトが表示され、画像フレーム付きのスライドも選択できます。また、AI文章生成「マジック作文」や音楽生成機能も提供されています。無料で利用可能ですが、一部の機能は有料です。
2. Beautiful.AI
Beautiful.AIは、AIがリアルタイムでスライドのデザインを自動調整してくれるツールです。チームメンバーとの共同作業機能が実装されており、複数人で共有しながら資料を作成できます。一定期間の無料トライアルがあり、個人向けプランは月額12ドルからとなっています。
3. イルシル
「イルシル」は、生成AIでスライド資料作成を自動化し、誰でも簡単にスライドやパワポが作れるサービスです。3,000種類以上のテンプレートから選択でき、キーワードやメモを入力するだけでAIが構成案から本文、デザインまで自動生成します。また、AIチャット機能のWeb検索機能を活用し、最新のインターネット情報を自動取得することも可能です。
4. Microsoft 365 Copilot
PowerPointデザイナーを含むMicrosoft 365 Copilotは、Word、Excel、PowerPointなどのアプリに組み込まれたAI機能です。チャット形式でリクエスト文を送信することで、文書作成・データ分析・資料作成などの業務をAIが支援します。企業のデータを安全に活用でき、情報漏えいリスクを軽減しながら、Microsoft製品間の横断的な作業を効率化できるのが特徴です。
まとめ:PowerPointデザイナーを使いこなそう
PowerPointデザイナー機能は、デザインスキルがなくても、プロフェッショナルなプレゼンテーションを簡単に作成できる強力なツールです。
基本的な使い方を理解し、適切に活用することで、プレゼンテーションの質を向上させることができます。