Excel(エクセル)は表計算ソフトとして広く利用されていますが、フローチャートの作成、組織図の描画、資料のレイアウト調整など、図形描画機能も頻繁に使用されます。
視覚的にわかりやすい資料を作成するためには、図形(オートシェイプ)を効果的に活用することが不可欠です。
本記事では、Excelで図形を作成・挿入する基本的な手順から、サイズ変更、色や枠線の設定、文字入力、複数の図形を効率的に扱うための整列やグループ化の方法について解説します。
さらに、フローチャート作成に便利なコネクタの利用や、複雑な図形構成を管理するための選択ウィンドウの活用なども紹介します。
Excelで図形を作成(挿入)する手順
Excelのシート上に図形を追加する基本的な操作手順は以下の通りです。
- リボンの[挿入]タブをクリックします。
- 「図」グループにある[図形]をクリックします。
- 表示される一覧から、使用したい図形(四角形、矢印、円、吹き出しなど)をクリックして選択します。
- シート上の図形を配置したい場所で、マウスをドラッグします。ドラッグした範囲に合わせて図形が描画されます。
クリックするだけでも標準サイズで図形が挿入されますが、ドラッグすることで任意の大きさで作成できます。また、正方形や真円を描きたい場合は、キーボードの[Shift]キーを押しながらドラッグすることで、縦横比を固定したまま作成できます。
図形のサイズ変更と移動
作成した図形は、後から大きさや位置を自由に調整できます。
サイズを変更する
図形をクリックして選択すると、周囲に白い丸(ハンドル)が表示されます。このハンドルにマウスポインターを合わせ、矢印の形が変わった状態でドラッグするとサイズを変更できます。四隅のハンドルを使用すると、縦横のサイズを同時に変更できます。ここでも[Shift]キーを併用することで、縦横比を維持したまま拡大・縮小ができます。
移動する
図形の内側(ハンドル以外の部分)にマウスポインターを合わせ、ドラッグすることで図形を移動できます。微調整を行いたい場合は、図形を選択した状態でキーボードの矢印キー([↑][↓][←][→])を押すと、少しずつ移動させることができます。
図形の書式設定(色・枠線・効果)
図形の色や枠線のスタイルを変更することで、デザイン性を高め、視認性の高い資料を作成できます。これらの設定は、図形を選択した際にリボンに表示される[図形の書式]タブから行います。
塗りつぶしの色を変更する
- 対象の図形を選択し、[図形の書式]タブをクリックします。
- 「図形のスタイル」グループにある[図形の塗りつぶし]をクリックし、好みの色を選択します。
- 「塗りつぶしなし」を選択すると、背景が透けて見えるようになります。枠線だけの図形を作りたい場合に有効です。
枠線を設定する
[図形の枠線]をクリックすると、枠線の色、太さ、線の種類(実線、点線など)を変更できます。枠線を消したい場合は「枠線なし」を選択します。
図形の効果を適用する
[図形の効果]を使用すると、影、反射、光彩、ぼかし、面取り、3D回転などの視覚効果を追加できます。ただし、ビジネス文書では過度な装飾は避け、シンプルで見やすいデザインが推奨されます。
図形への文字入力と配置
Excelの図形には、テキストボックスを使わなくても直接テキストを入力できます。
テキストを入力する
図形を選択した状態で、キーボードから文字を入力するだけでテキストが追加されます。既存のテキストを編集する場合は、図形を右クリックしてコンテキストメニューから[テキストの編集]を選択するか、図形内のテキスト部分をクリックします。
文字の配置を調整する
入力した文字の配置(左揃え、中央揃え、右揃え、上揃え、上下中央揃え、下揃え)は、[ホーム]タブの「配置」グループにある各ボタンで調整します。図形内の中央に文字を配置したい場合は、[中央揃え]と[上下中央揃え]の両方をクリックして設定します。また、図形内で文字が折り返されないようにしたい場合や、余白を調整したい場合は、図形を右クリックして[図形の書式設定]を開き、「文字のオプション」から詳細な設定を行うことができます。
複数の図形を整列・グループ化する
複数の図形を使用する場合、それらをきれいに並べたり、まとめて扱う機能を利用すると効率的です。
図形を整列させる
複数の図形を選択([Shift]キーまたは[Ctrl]キーを押しながら順にクリック)し、[図形の書式]タブの「配置」グループにある[配置]ボタンをクリックします。「左揃え」「上揃え」「左右に整列」などのオプションを使用することで、手動で調整するよりも正確かつ迅速に図形を並べることができます。
図形をグループ化する
複数の図形を一つのオブジェクトとして扱いたい場合は、グループ化を行います。
- まとめたい複数の図形を選択します。
- [図形の書式]タブの「配置」グループにある[グループ化]をクリックし、ドロップダウンメニューから[グループ化]を選択します。ショートカットキー[Ctrl] + [G]を使用することも可能です。
グループ化することで、複数の図形を一度に移動したり、サイズを変更することが可能になります。グループ化を解除するには、同様の手順で[グループ解除]([Ctrl] + [Shift] + [G])を選択します。
図形の重なり順序を変更する
図形同士が重なった場合、どちらを前面に表示するかを指定できます。
- 順序を変更したい図形を選択します。
- [図形の書式]タブの「配置」グループにある[前面へ移動]または[背面へ移動]をクリックします。
「最前面へ移動」や「最背面へ移動」を選択すると、重なっているすべての図形の一番上または一番下に配置されます。
高度な図形編集テクニック
基本操作に加えて、さらに表現の幅を広げるためのテクニックを紹介します。
図形の頂点を編集して形を変える
既存の図形の形を自由に変形させることができます。
- 図形を選択し、[図形の書式]タブの「図形の挿入」グループにある[図形の編集]をクリックします。
- [頂点の編集]を選択します。
- 図形の輪郭に黒い点(頂点)が表示されます。この頂点をドラッグすることで、形を自由に変形できます。
コネクタを使って図形同士を接続する
フローチャートなどを作成する際は、単なる「線」ではなく「コネクタ(カギ線や矢印)」を使用すると便利です。
- [挿入]タブの[図形]から、「線」セクションにある[カギ線コネクタ]などを選択します。
- 図形にマウスポインターを近づけると、接続ポイント(灰色の点)が表示されます。
- 始点の接続ポイントから終点の図形の接続ポイントまでドラッグします。
コネクタで接続された図形は、移動させても線が追従して繋がったままになります。
「選択ウィンドウ」で図形を管理する
シート上に多数の図形がある場合、特定の図形を選択するのが難しくなることがあります。そのような場合は「選択ウィンドウ」が役立ちます。
- [図形の書式]タブの「配置」グループにある[オブジェクトの選択と表示]をクリックします。
- 画面右側に「選択」作業ウィンドウが表示されます。
ここでは、シート上のすべての図形がリスト表示されます。リストから名前をクリックして選択したり、目のアイコンをクリックして表示/非表示を切り替えたりできます。重なり順序の変更も、リスト内で項目をドラッグするだけで行えます。
デフォルトの図形書式を設定する
毎回同じ色や枠線の設定を行うのが手間な場合、デフォルト設定を変更できます。
- 好みの書式(色、枠線、フォントなど)を設定した図形を作成します。
- その図形を右クリックし、[既定の図形に設定]を選択します。
これ以降、そのブック内で新しく作成する図形には、この書式が自動的に適用されます。
効率的に図形を作成するためのヒント
作業効率を高めるための操作テクニックをまとめました。
枠線(グリッド)に合わせる
図形をセルの枠線にぴったりと合わせたい場合は、[図形の書式]タブの[配置]メニューから[枠線に合わせる]を有効にします。これにより、図形の移動やサイズ変更時にセルのグリッド線に吸着するようになります。[Alt]キーを押しながらドラッグすることでも、一時的に枠線に合わせる機能が有効になります。
図形を複製する
同じ図形を複数作成する場合、コピー&ペースト以外にも、[Ctrl]キーを押しながら図形をドラッグすることで素早く複製できます。また、図形を選択して[Ctrl] + [D]キーを押すことでも複製が可能です。等間隔に複製したい場合は、一つ目を複製して配置した後、そのまま[Ctrl] + [D]を繰り返すと、同じ間隔で次々と複製されます。
まとめ
Excelでの図形作成は、[挿入]タブからの基本的な操作に加え、[図形の書式]タブを使用した詳細な設定、整列・グループ化、頂点の編集やコネクタの活用など、多岐にわたる機能が用意されています。
これらの機能を使いこなすことで、単なる表計算だけでなく、視覚的に優れた資料や複雑なフローチャートも効率的に作成できるようになります。